松本零士「涙が出そう」と感激、日本の伝統技術とタッグ組んだ浮世絵お披露目

松本零士の原画をもとにした浮世絵木版画「松本零士 浮世絵コレクション」の発表会が、本日3月7日に東京・すみだ北斎美術館にて開催。壇上には松本をはじめ、書道家の涼風花、ひろた組のひろたたけし、竹笹堂の竹中健司という制作に携わった面々が登場した。

ブロード・エキスパートの公式サイトにて、本日発売された「松本零士 浮世絵コレクション」。「銀河鉄道999」「宇宙海賊キャプテンハーロック」「宇宙戦艦ヤマト」を題材にした全6種類が展開され、ひろた組によるコンセプトワークのもと、人間国宝・岩野市兵衛が作る和紙に老舗・竹笹堂の伝統技術で絵柄が印刷されている。また各作品には、涼によって筆で題字が入れられた。

まず最初に松本は「子供のとき、浮世絵の真似事をして筆で絵を描いていて。『北斎漫画』も全部持ってました」と述懐。完成した浮世絵について「自分の絵を木版でここまで再現していただけるのは夢みたいです。小さい頃からこういう絵に憧れてたので感無量で、うれしくて涙が出そう」と溢れる思いを語る。すると図案と文案、総監督を務めたひろたも同じく「感無量です」と返し、「先生の世界がみんな好きで、スタッフ一同で半年以上かけて絵と文章を作りました。それから竹中さんへバトンタッチして浮世絵に仕上げてもらったんですが、本当に幸せな1年でした」とにこやかに述べる。

小学生の頃、「宇宙戦艦ヤマト」のイラストを何度も描いていたという摺師の竹中。人間国宝・岩野による和紙について「生きてるような和紙を使うことによって、未熟な僕でさえすごくうまく擦れるということになるんです」と冗談めかして笑いを誘う。題字を手がけた涼は「本物の諸先輩方々と一緒に作品を作るというのはプレッシャーもありましたし、『本当に私でいいのかな』という迷いもありました」と当時の心境を吐露。続けて「墨をどこで入れて太さを出していくのか、線の太さ細さをどれぐらい差をつけるかなどを考えました。夜中も寝ないで考えたり、ということをしながら工夫をたくさん凝らしました」と制作の裏側を語った。

さらに竹中からは、海外進出へ向けて意欲を示すコメントも。「フランスのジャポニズムというのは浮世絵から始まっているんです。日本文化は外国人にとって驚きを与えるものだということだと思うので、またこの作品をフランスに持ってたら喜ばれるかなと考えております、というか実行しています」と観客たちの期待を膨らませる。

ここで話題は、葛飾北斎の「富嶽三十六景」の1つ「神奈川沖浪裏」をオマージュしたという浮世絵「波上のアルカディア」へ。ひろたは「一番最初に、浮世絵をかなり意識して構図を作ったらこれが出てきたんです。ただ後ろが宇宙になっているので、世界観が広がって(北斎とは)別作品になりました」と明かし、「これが一番“浮世絵イズム”が出てるんじゃないかな」と話した。

最後に松本は「北斎が描く波の具合が好きでしてね。ああいう背景として描かれているものがとても大事なんですよ。人が描くものは情感が残るんです。日本の人は心を描くというのに時間を費やしていて、それが今我々に受け継がれているんです。それを残してくださった北斎をはじめ、あらゆる先人の方々に感謝しております」と感謝を述べ、イベントは締めくくられた。

(c)松本零士 (c)BROAD EXPEBRT/2017

(2017/3/7 20:59)

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